東京高等裁判所 昭和37年(ラ)379号 決定 1962年10月02日
決 定
抗告人
国光電機労働組合
右代表者執行委員長
新島常嘉
右訴訟代理人弁護士
海野普吉
同
西田公一
同
六川常夫
同
宮里松正
同
内田博
同
小田成光
同
今永博彬
同
入倉卓志
相手方
国光電機株式会社
右代表者代表取締役
桜井健一
右当事者間の東京地方裁判所昭和三七年(ヲ)第一二五〇号執行方法に関する異議申立事件につき昭和三七年六月二十日同裁判所のした決定に対し抗告人より即時抗告の申立があつたので、当裁判所は次の通り決定する
主文
原決定を取消す。
相手方の本件執行方法に関する異議申立を却下する。
理由
東京地方裁判所昭和三七年(ヨ)第二一〇号仮処分事件記録によれば、相手方国光電機株式会社の申請にかかる右仮処分事件につき東京地方裁判所は昭和三十七年四月二十日『被申請人(本件抗告人)国光電機労働組合は申請人本件相手方国光電機株式会社が別紙物件目録記載の土地建物(註申請人の工場の土地建物、別紙省略)から製品、プレス用型、外注加工用資材原材料及び部品を搬出することならびに申請人の従業員(非組合員)が右土地建物に立入つて就業することを、口頭でその中止を説得する以外の方法で妨害してはならない』旨の仮処分決定をなし、右決定正本は同月二十一日抗告人国光電機労働組合に送達されたことが明らかである。次に本件記録によると、相手方国光電機株式会社の申立は、抗告人国光電機労働組合が仮処分決定による耐忍義務に違反し、実力を以て相手方国光電機株式会社の出荷並びに従業員の出入を妨害するので、相手方国光電機株式会社は昭和三十七年四月二十七日民事訴訟第五三六条執行吏執行手続規則第五六条に則り東京地方裁判所執行吏に委任して抗告人国光電機労働組合の妨害行為の排除を求めたが、同執行吏がこれに応じないので、同執行吏に対し前記仮処分決定による抗告人国光電機労働組合の耐忍義務違反の抵抗を排除すべきことを命ずる旨の裁判を求めるということにあつた。而して原審は相手方国光電機株式会社の申立を容れ、同年六月二十日「東京地方裁判所執行吏内村寅吉は、申立人(本件相手方)国光電機株式会社の委任に従い、東京地方裁判所昭和三七年(ヨ)第二一〇号業務妨害禁止仮処分に基く相手方(本件抗告人)国光電機労働組合の耐忍義務違反の抵抗を排除しなければならない』旨を決定したが、その後同年六月二十九日相手方国光電機株式会社において前記東京地方裁判所昭和三七年(ヨ)第二一〇四号業務妨害禁止仮処分申請を取下げた。仮処分申請の取下は仮処分決定後でも被申請人の同意なくしてこれをなしうるし又仮処分申請の取下により仮処分決定は当然失効するものと解されるから、東京地方裁判所昭和三七年(ヨ)第二一〇四号業務妨害禁止仮処分決定は右取下により失効したものというべきである。而して執行方法に関する異議申立はその基礎たる債務名義が有効に存続していることを前提とするものであるから、右のように既に仮処分決定が失効してしまつた以上仮処分債権者(本件相手方)これが執行方法について異議を申立てる利益を欠くものと謂わねばならない。よつて相手方国光電機株式会社の本件執行方法に関する異議の申立はその利益がなく、これを容認した原判決は結局失当というほかはないから、これを取消し、相手方国光電機株式会社の右申立を却下することとし、主文の通り決定した。
昭和三十七年十月二日
東京高等裁判所第十民事部
裁判長判事 梶 村 敏 樹
判事 室 伏 壮一郎
判事 安 岡 満 彦